しかし、こういうグラフを描かせるのはかんたんですが、実際にそのとおりに実行できた生徒を実は私は見たことがありません。1日に4時間とか6時間も机に向かえば夏休みの宿題なんてあっという間に片付くし、あらゆる学習課題に精通し、もう学ぶことが何もなくなるくらいじゃないかと思うのですが、実際にそういうふうになる生徒は一人もいません。そして確認してみると、計画表通りの生活ができた日なんて、1日か2日あればいいほうだということが判明します。そこから発破をかけてなんとか夏休みの課題を乗り切ることができれば御の字というのが、だいたいのところです。
おかしいですね。これは、そもそも計画がきちんと立てられていないのです。実際に一日を過ごしてみればわかりますが、「8時間の睡眠、2時間の食事と入浴、5時間の学習…」みたいな計算は机上の空論に過ぎません。時間はどんどんこぼれ落ちていくのですが、それにはすべて、それなりの理由があります。だから、まずはどこにどれだけの時間が失われるのかを正確に把握しなければ、計画なんて立てられるはずがないのです。
そこで私は今年から、「計画を立てましょう」式の夏休みの入り方をやめることにしました。その代わり、同じようなグラフを、予定ではなく、実績として毎日つくることを課題に出すことにしました。慣れれば10分でできるでしょう。
そして、そういうふうにグラフを描くことで、実際にどれだけのことが自分に可能なのかが見えてきます。つまり、計画を立てる前に、まず実情を知りましょうというわけです。現実を直視することからスタートするのは学問の基本です。それは、計画立案というような段階にもいえることです。
なによりも、そういうふうに記録をとることで、生徒の時間に対する意識が変わるのではないかと思います。さて、どういう結果が出るか、秋が楽しみです。