彼は素性がいいのになかなか成績に反映されず、中3のときの進路指導でも思ったようなところを受験されてくれず、それで思い切って私立専願にして進学した生徒でした。無事合格したから良かったのですが、最低ラインでの滑りこみ合格。特に数学の得点が低く、「このままでは留年か退学(系列の別の高校への転校)ですよ」と通告されていました。そんな背伸びをして進学してどうなると、ふつうなら思います。けれど、教えていて素質は十分に感じていました。本来の力が出せればトップクラスの高校にも行けると思っているのに、なぜか点数に反映されない。いつか開花するだろうと思いながら、それ以前に潰されてしまわないかなあというのが心配でした。
だから、教えている生徒の成績がよくて「やっぱりオレの指導がよかったんだ」という具合に嬉しかったというのではないのです。そうではなく、自分の見立てが間違っていなかったことが証明されてホッとしたというのが正直なところです。そして、私の言葉を信じて諦めなかったこの生徒の努力を賞賛したい気持ちになったわけです。
小さな勝利に過ぎません。この先、まだまだアップダウンは続くでしょう。それでも、目先の点数を追いかけず、ひたすら正しい理解だけを追い求めていけば、いつかはそれが成績に反映されていくのだと思います。そして、最終的に重要なのは、成績ではなく、学習そのものの成果です。学習を通じて身につけるスキルや知恵こそが、実社会で役立つわけです。そこまでを見越した指導を続けていきたいと思います。